■美神の肢体‥‥‥ボディデザイン(1)

○ボディとエクステリアスタイル
 あなたは、"VEMAC RD 180 "を見て、どう感じるだろうか?
 斬新なデザインだ、と感じるだろうか。それとも、懐かしいデザインだと感じるだろうか。ぼくは個人的には、かつてどこかで出会ったような、だがよく見ると初めてみるデザインだなと感じる。スポーツカーというものは、そういうものだと思うのだ。
RD180 b/cブルーメタリック
RD180 b/cブルーメタリック
 誰もが、フェティッシュとしてのスポーツカーというものを心の奥底に抱えている。そんなものは無縁だという人は、セダンに乗ればいいのである。
 心の奥底に"スポーツカー"の名前で呼ばれるフェティッシュを抱えた人間達。そんな種族のためにこそ、スポーツカーは存在し続けてきたのだ。
 そして、そいつがフェティッシュであるためには、どこかで見たことがあるような気がする��という、一種の既視現象は不可欠なのではないだろうか。こうして練り上げられてきたスポーツカーデザインの歴史そのものが、物語を形作ってきたのである。
 "VEMAC RD180 "は、とても美しい。それは、もしかしたら、ぼくらが1960年代に夢見た美しさであるのかもしれない。そこが、いい。
 美しい女性というものが存在するととして、誰も見たことがない美人などというものは存在しようがないのだから。  「CR」プロジェクトのメンバーが目指したスタイリングテーマは"Timeless"であった。すなわち、時代を超越した普遍的なスタイリングだ。"スポーツカー"という言葉から人々が自然に連想する形に、新しい風を送りこみながら素直に表現したスタイル。
 官能、神秘性、危険な匂い、シャープなエッジ、男っぽさ。"VEMAC RD180 "はそれらをバランスよく、高いレベルで実現しているとぼくは思う。
 スポーツカーの目的が"走り"であるとして、その"走り"はボディデザインと無関係ではないのである。いわばデザインは、もっとも重要な"性能"のひとつなのである。
 一方で、ボディはクルマの軽量化の最大のポイントでもあり、乗員保護の面でも大きな役割が求められている。ボディは、スポーツカーとオーナーでもあるドライバーとが直接につねに接する場でもある。そのために、軽量で、丈夫で、振動、騒音の少ない快適なものにする必要がある。
 少量生産の場合、コストを無視しない限り色々ある軽量素材について検討が重ねられた。結果は予想通り、少量生産であるが故の魅力ある形創りに必要な造形の自由度、軽量効果、強度、剛性、耐久性、生産性等からF.R.P.が適材という結論に達した。
 さらににそれをフロントボディとキャビンを結合したセミモノコックボディ構造とすることで、高剛性と衝撃吸収性に優れたボディを実現したのである。
 生産は、伝統あるクラフトマンシップによって脈々と受けつがれてきた高い生産技術を有する英国で行われることになった。